足りないなら、補えばいい。
愛用者インタビュー
ゲスト:梅沢富美男さま
福島県福島市出身。1939年に旗揚げした剣劇一座「梅沢劇団」の創設者にして戦前・戦後まもなくの大衆演劇隆盛期のスタ-であり、浅草「常盤座」などの劇場を満員にした花形役者の父・梅沢清と娘歌舞伎出身の母・竹沢龍千代の間に生まれた。
•1歳7ヶ月初舞台。15歳より梅沢劇団で本格的に役者として舞台に立つ。その後、24歳頃舞踊ショーの女形が話題となり、「下町の玉三郎」と呼ばれる。'83年デビュー曲の『夢芝居』が大ヒット。NHK紅白歌合戦に出場。この年、日本有線大賞最優秀新人賞など、各音楽賞受賞。2012年10月より梅沢富美男劇団座長となり舞台のほか、テレビ、ラジオ、映画に、役者、歌手、コメンテーターなどマルチに活動を展開。
耳が聴こえないということが、こんなに自分を変えてしまうのか、と気づかされた。
私は、舞台役者という仕事柄、歌を歌ったり音楽を聞くという機会がとても多いです。1~2時間レコーディングブースに入って、ヘッドフォンをつけて、音楽がガンガン流れている状態で仕事をするということもたくさんある。これは職業病といったらそれまでなのですが、徐々に耳が難聴になっていったんですよね。そんな時に、知り合いの芸能関係の方も通われている病院に行きました。そしたら、右耳が難聴、左耳が中耳炎になっていて、鼓膜も破れていたんですよ。若い方であれば数日で回復するそうなのですが、年齢もあって耳の筋肉が緩んでいる状態ではかなり時間がかかります、と言われました。右耳が難聴、左耳が鼓膜が破れている状態。全く音が聞こえなくなっていきました。
耳が聞こえないと、テレビ番組にも出られないし、舞台を出るのも段々困難になっていきました。そのうち、自分に異変が起きていることに気づきました。段々人と話すことが億劫になっていったんです。舞台では、みなさんとおしゃべりをする機会もあります。聞こえなくなっていくと、段々会話ができなくなっていく。マネージャーの声もうっすら聴こえているけれど、理解ができない。家族との会話も減っていったり、意思疎通ができなくなっていったんです。そうしているうちに、気持ちだけでなく、体にも変化が出てきました。ふらついて真っ直ぐ立っていられなかったり、ゴルフをしていても全然当たらなくなっていったり。徐々に、何もやる気が起きなくなって、塞ぎ込むようになっていったんですよ。その頃には、鼓膜が治ったとしても80代くらいの聴力になっていて。そんな時に、お医者さんから補聴器を勧めていただきました。
「眼鏡はかけるのに、なぜ補聴器はつけないのですか?」
私と同じくらいの世代の人たちは、補聴器に対しての良いイメージを持っていないと思います。理由は人によって様々かと思いますが、私たち世代の人がイメージする補聴器は、すごく重たくて大きくて、耳につけていると目立つようなもの。そんなものを自分の耳につけていること自体を嫌だと思う人が多いんじゃないですかね。私もそうでした。それに、仕事柄そんな風に目立つ補聴器をつけてドラマには出られないですし、歳をとった俳優はどんどん作品に出られなくなっていくというイメージもありました。そんなことを正直にお医者さんに伝えたら、「じゃあ、なんでメガネはかけるんですか?」と言われたんです。ハッとしましたよ。この歳になってくると、みんな老眼鏡を使っていて、老眼鏡もどんどん薄くなってかっこよく進化している。補聴器も同じだったんですよ。とっても軽くて小さいし、耳に入れていても、他の人は気づかないくらい見えにくい。それに、私が使っている補聴器は「音楽モード」というものが搭載されていて、音楽の仕事をするときは切り替えができるんです。え?補聴器ってこんなに便利で進化していたの?と、驚きました。イメージが180度変わりましたね。
耳が聞こえるようになると、こんなにも前向きになれる。
補聴器をつけてから、聞こえが良くなったというだけでなく身体や生活に良い変化が出てきました。自分の話し方にも変化が出てきて、以前のように江戸弁に近い早口で話せるようになっていったり、声も太くなっていきました。
今使用している補聴器は、耳に入れていてもとっても軽いし、違和感がない。外から見ても全くつけているか分からないくらいの小ささなので、仕事中はもちろん、寝る直前までずっとつけています。耳の形に合わせて調整もしてくださいますし、常に自分の耳に合った状態で生活ができる点が気に入っています。耳が聞こえるようになっただけで、こんなに気持ちが前向きになって、生活にも変化が出るのかと実感しましたね。
補聴器はずっと使用していると、クリーニングや、耳の形に合わせた調整が都度必要になってきます。「ちょっと最近違和感が出てきたな・・・」という感じで、小さな変化がちらほら出てくるんです。ヒヤリングストアさんは、私の耳の状態をよく把握しているスタッフの方が、調整や補聴器のクリーニングを定期的に対応してくれます。これはお金に変えられない価値ですよね。そうやって、補聴器と向き合っていくことが大切ですね。
補聴器をつけることは、全く恥ずかしいことではない。
私の母親が生前、言ってくれたとても印象に残っている言葉があります。
「弱いところがあるなら、補えばいい」
幼い頃、芝居の稽古をしている時に言われた言葉でしたが、今回補聴器をつけるかどうか検討しているときにこの言葉を思い出しました。弱いところや足りないところがあれば補えばいいんです。私くらいの年齢になると、みんな年齢のせいにするんですよ。「歳のせいだ」って。でも、歳のせいでそうなるのであれば、補えばいい。それは、私が身をもって実感したことです。私たちの世代の人は、エネルギッシュで元気な人がたくさんいました。今、そんな人たちが大人しくなってしまっている理由の一つには、きっと耳の聞こえにくさも影響していると思うのですよ。だから、「補聴器をつけましょうよ」と、いろんな人におすすめしています。もしかすると、一度補聴器を購入して使ってみたけれど、耳の形にあってなかったり、音の調節ができていなかったりといった色んな理由で嫌になってしまった人もいるかもしれない。でも今は、本当に色んな種類の補聴器が出ていますし、自分の耳に合わせて調整をしてくれるサービスだってあります。ぜひ勇気を出して、一歩踏み出していただきたいですね。