2019.6.5
アメリカの補聴器市場はどうなっているの?日本との比較で見えてくるトレンド
補聴器先進国と言っても過言ではないアメリカ、一方で世界でも稀に見る超高齢化社会として注目されている日本。他の分野でも比較されることの多い、この二つの国の補聴器市場(マーケット)について、今回は比較検討してみました。
人口で比較してみる
2018年時点で、日本の総人口は1憶2645万人、アメリカの総人口は3憶875万人でした。
人口比は約2.45倍となります。
一方、65歳以上の人口は、日本では3559万人で総人口における割合は28.2%と高い割合です。アメリカの65歳以上の人口は4816人で総人口における割合は15.6%となっています。
補聴器の総販売台数は?
2018年の日本における補聴器の総出荷台数は58万5千255台でした。前年比は104%でした。アメリカのセールスデータでは396万9千895台で、400万台目前となっています。
前年比は105.3%とこちらも好調な伸びを示しています。
総人口における補聴器販売台数の割合は日本で約0.5%、アメリカでは1.2%でした。
単純に計算してもアメリカの補聴器市場は日本の倍以上の規模感であることが想像できます。
特殊なアメリカの市場
アメリカの補聴器販売台数が約400万台と非常に大きなマーケットであるのはわかりましたが、少し特殊な事情があります。アメリカのセールスデータをみると大きく2つに分かれています。それは「民間での売り上げ」と「退役軍人への提供」です。民間での売り上げは、自費もしくは保険会社からの支払いで成り立っていますが、退役軍人枠では費用負担はアメリカ軍となります。ちなみに2018年における退役軍人への提供は全体の18.8%(約74万6千台)でした。退役軍人への福祉の手厚さはこのようなところにも現れています。
タイプ別の売り上げから見るトレンド
今度は補聴器のタイプ(形状)別の売り上げを見てみましょう。
アメリカにおける耳掛け型の割合は驚くべきことに、全体の85%以上を占めました。
日本は65.9%ですので、その差は歴然です。
ちなみに耳掛け型にはノーマルタイプとRICタイプ(レシーバー外付け型)に分けられています。RICタイプはレシーバーが外付けのため本体が小さく設計されていて、目立たなくておしゃれな形状が増えており、近年人気のタイプです。アメリカではこのRICタイプの割合が全体のうち72.5%を占めているそうです。ノーマルタイプの耳掛け型の割合が12.7%ですので、耳掛け型の5~6人に一人がRICタイプを購入していることになります。
一方、日本では耳掛け型の占める割合は65.8%ですが、ノーマルタイプが31.8%でRICタイプが34%でしたので、割合は半々と言えます。
耳あなが型に関しては、アメリカでは15%、日本では約30%でした。
ただし、日本ではそのうち4%が既製品(オーダーメイドではない)となります。
形状をさらに詳しくみていくと、ITE(フルサイズ型)がアメリカで6.2%、日本で4.5%でした。ITC(カナル型)がアメリカで4.9%、日本で16.9%でした。CIC(超小型)がアメリカで3.8%、日本で5.3%でした。
日本でもこの10年間でオーダーメイド補聴器から小型耳掛け型補聴器へトレンドが変化してきましたが、アメリカではその先を行く結果となりました。
最近では、小型耳掛け型補聴器のデザインがさらに洗練してきているため、この傾向にますます拍車が掛かると予想されます。一方、日本ではオーダーメイドタイプの中でも特にカナル型の補聴器に根強い人気があります。「耳にかけて、耳せんを入れる」耳掛け型と違って、オーダーメイドタイプは「耳に入れるだけ」で簡単な装着も依然魅力的です。
今後、オーダーメイドタイプのシェアがどうなっていくのかは、業界関係者としても注目している点です。
今回はアメリカと日本の補聴器市場と比較してみました。
アメリカはまだ日本ほどの高齢社会ではないものの、退役軍人へのサポートも含め、その販売台数の多さから、難聴に対する補聴器でのケアが浸透していることがわかります。
日本においても補聴器の普及に関して努力している団体はたくさんあります。
それらの活動が実を結び、聞こえに困った方々に適切なケアが行き渡るような社会になることを願っています。ヒヤリングストアとしても、地域の皆様により良い聞こえをお届けすべく日々の研鑽を続けていきます。
【参考資料】
日本:総務省統計局、日本補聴器工業会「2018年補聴器出荷台数」
アメリカ:US Census、Hearing Review.com(US Hearing Aid Sales Increase by 5.3% in 2018; Approach 4-Million Unit Mark)