2018.1.9
補聴器の種類とその特徴
補聴器にはどんな種類がある? その特徴は?
補聴器を生産しているメーカーは、海外・国内にたくさんあります。多くの器種のなかから自分に合った「聞こえ」や「使いやすさ」のものを選びましょう。また、どのくらいの「予算」を考えているかも大事です。
補聴器の種類と特徴
耳あな型
耳穴に収まるタイプの補聴器を「耳あな型」と呼びます。補聴器全体が耳穴に入る小型のものから、一部が耳の外まで露出する大型のものまで、いろいろなタイプがあります。耳あな型は目立たないので周囲に補聴器を使っていることが分かりにくく、スマートに使用できるという利点があります。また音を集める位置が、補聴器なしで音を聞く部分とほぼ同じなので、音質や方向性も自然に聞こえるというメリットがあります。なお、耳穴は個人によって形状が違うので、オーダーメイドタイプが主流になります。
耳かけ型
耳に掛けて使用するタイプの補聴器を「耳かけ型」と呼びます。耳あな型よりはスペースがあるので、操作が簡単で、取り扱いも容易です。音を集める位置と音を出す位置が離れているためハウリング(ピーピーという音)が出にくく安心して使えます。ただし、耳に補聴器をかけるため、メガネをかけている人や、マスクをよく使う人にとっては、不便に感じるかもしれません。また、耳の裏は汗の通り道になりやすいので、スポーツなどをする場合は注意が必要です。汗はすぐ拭きとるなど、こまめにメンテナンスしましょう。
ポケット型
補聴器の本体を胸ポケットなどに入れ、コードで耳のイヤホンとつないで使用するタイプの補聴器を「ポケット型」と呼びます。本体が大きめで操作が簡単なのが利点で、器種によっては高出力が得られるものもあります。価格も比較的安価です。よく動きまわる人はコードを邪魔に感じることがあるかもしれません。また、胸ポケット内の衣ずれの音が入ったりする可能性があります。
メガネ型
メガネのツルの部分に補聴器を内蔵したタイプのものを「メガネ型」と呼びます。メガネと補聴器をスマートに併用したい人にとっては便利な製品です。ただし、メガネのレンズと補聴器の両方をしっかり調整できる技術が必要がです。
カチューシャ型
髪飾りのカチューシャに補聴器を内蔵したタイプのものを「カチューシャ型」と呼びます。主に女性を対象にしたもので、補聴器をおしゃれの一部として装用できます。ただし、常に同じカチューシャをつけていなければならないという制約もあります。
その他
他にも特殊な機能を搭載した補聴器が開発されています。たとえば、離れた場所に設置した送信機から手元の補聴器に音を送るような、騒音環境での聞き取りを改善させたタイプや、高音域の聞きにくい子音を聞きやすい周波数に調整するタイプなどがあります。
骨伝導補聴器とは?
骨伝導とは、音(振動)が頭蓋骨を介して直接的に聴神経に伝わる仕組みのことをいいます。私たちは耳から空気の振動(気導音)で音声を認識していますが、それ以外に、骨の振動(骨導音)も聞いています。補聴器には、この骨導音を利用した骨伝導補聴器というものがあります。
ビデオやボイスレコーダーで録音した自分の声を聞くと、自分の声とは少し違うように感じることがあります。なぜかというと普段から聞いている自分の声は気導音と骨導音がミックスされたものですが、録音された声は気導音のみになるからです。すなわちいつも自分が聞いている自分の声と、他人が聞いている声は異なるわけです。
クラシックの有名な作曲家ベートーヴェンは聴覚障害を患っていたにも関わらず、多くの名曲を残しました。彼は口にくわえた指揮棒をピアノに添え、ピアノが奏でる音を歯から頭蓋骨に伝えて聞いていたといいます。これが骨伝導であり、気導音が認識できなくても音を聞くことができる方法です。
骨伝導を活用する補聴器は、外耳や中耳を介さずにストレートに内耳に音を届けることができます。つまり外耳や中耳に何らかの病気や障害が起こっても、音声を聞くことができるわけです。内耳そのものに障害がある感音難聴の場合には有効ではないものの、外耳や中耳に原因がある伝音難聴の改善には大きな役割を果たしています。
骨伝導補聴器のメリットには次のようなものがあります。
- 耳をふさぐ必要がないので周囲の音も聞くことができる
- 耳せんを使用しないので耳に閉塞感がない
- メガネ型の骨伝導補聴器は他人に気づかれない
骨伝導補聴器にはデメリットもあります
- 感音難聴には有効でない
- 高度な難聴には対応できない
- 振動をよく伝えるために締め付けるので痛みが出ることがある
- 位置がずれると聞こえにくくなることがある
骨伝導補聴器を使用する場合は、これらのメリットとデメリットをよく検討し、自分に合ったものを選びましょう。一般的な補聴器と骨伝導補聴器では音を聞く仕組みが根本から違いますので注意が必要です。
集音器は補聴器に似ているが大きく違う
補聴器と集音器は「聞きにくい音を聞くための機器」という点では似ていますが、実はまったく違うものです。購入する場合は注意しましょう。
最大の違いは、補聴器は医療機器であり、厚生労働省の認可を得て製造・販売されているものだということです。認可には製造・販売において一定の基準をクリアしなければならないので、品質や性能に医療機器としての信頼があります。補聴器という品名で販売されている機器は薬事法において管理医療機器に分類されています。
それに対して集音器と呼ばれる商品は、製造や販売について特に制約があるわけではありません。誰がどのように製造しても構わないし、どこで販売するのも自由です。実際に家電量販店やネット通販などでも安く売られています。しかし効果や安全性には疑問符がつきます。アフターケアにも不安が残ります。
難聴はまさしく病気の状態ですから、きちんとした耳鼻咽喉科医の診察を受け、その診断をもとに補聴器の採否を決定し、もし補聴器を使う場合は有資格者のいる補聴器専門店で購入することをおすすめします。集音器でその場しのぎの対応をしても、病気の診断や治療の機会が遠のくだけです。
自分に合った補聴器の種類を選ぶには
補聴器を選ぶ際に大事なことは、自分の聴力の状態をしっかり把握することです。補聴器は器種によって対応できる難聴の程度が決まっていることが多いので、自分の難聴の程度に合った器種を選ぶことが大事です。
耳鼻咽喉科医と補聴器専門店のサポートを受けながら、自分に最適な補聴器を選択し、快適な「聞こえる暮らし」を取り戻しましょう。