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2018.1.9

65歳以上の約半数が「難聴」と言われているのをご存知でしたか?

難聴の症状がある高齢者は約1,500万人

高齢になると耳が聞こえにくくなることがある、ということは誰もが知っています。しかし実際のところ高齢者にどれだけの難聴者がいるかとなると、その実態はよく知られていません。というのも難聴には聞こえの状態などによっていろいろな捉え方があり、明確な集計がしにくいからと思われます。

たとえば独立行政法人国立長寿医療研究センターの調査によると、日本に居住する65歳以上の高齢者(約3,400万人)の約半数である約1,500万人に難聴の症状があると推計されています。これだけ多くの人に症状が見られる以上、私たちは難聴のことをよく理解し、万全の備えをしておくことが必要なのではないでしょうか。

公益財団法人テクノエイド協会ホームページより抜粋

高齢者の聞こえの状況とは?

難聴で音が聞こえにくくなるとどのような状態になるのか、実際に経験してみないと分かりにくいと思います。目が悪くなれば、文字を読むのに不便ですし、外出時に周囲を確認しにくくなるので、早いうちから事態を深刻に捉えます。ところが耳が少し聞こえにくくなった程度では、人はなかなか重要性を認識せず、備えや対策を先延ばしにしがちです。私たちは「耳も加齢で問題を抱える」ということをきちんと理解し、十分な準備をしておくべきではないでしょうか。

難聴になると、聞こえは次のような状態になります。高齢者であれば、症状はさらに顕著にあらわれることが予想されます。

  • 音が小さく聞こえる
  • 母音は聞こえるが子音(特にK,S,Tなど)が聞き取れない
  • 周囲の雑音で聞きたい音がぼやけてしまう
  • 反響する場所で聞きたい音がゆがんでしまう

難聴の人はこれらの状況に直面しつつも、聞こえた音に経験や推測を交えて判断しようとするため、実際に聞こえた言葉と違う言葉を認識してしまうことがあります。そうなると思わぬ行き違いが生じ、トラブル等につながりかねません。

私たちは日々の生活において、多くの場合、言葉を介してコミュニケーションをしています。言葉のやりとりをしながら、関係が深まったり、ときには誤解が生じたりもします。新しく知り合った人の名前を聞くときなど、耳が健常な人でも聞き間違えはよく起こります。高齢者の難聴の場合は特に聞き間違えによるコミュニケーションの問題が起きがちです。そして、それをきっかけにできるだけ人と話さないようになるなど、家に引きこもってしまうような事態を招きます。そうなる前に、聞こえを改善するため医師の治療や補聴器の装用を考えるべきです。

高齢者によく見られる難聴の症状とは?

難聴には大きく2つの種類があります。それは難聴の原因がある場所による分類です。外耳から中耳までの部分に原因があるものを「伝音難聴」、内耳から神経までの部分に原因があるものを「感音難聴」と呼びます。

耳の構造

公益財団法人テクノエイド協会ホームページより抜粋

「伝音難聴」

聞いた音が外耳から内耳に届くまでに物理的に弱くなってしまい、音量が小さく聞こえる難聴です。ただし音の質は維持されています。伝音難聴は症状を改善する治療法がおおむね確立されており、多くの場合、治療(処置、投薬、手術)による効果が期待できます。

「感音難聴」

聞いた音は内耳まで正常に届くものの、その音を知覚して分析する内耳または神経系のはたらきに障害があるものをいいます。この場合、音量が小さくなり、同時に音の質も劣化して聞こえるようになります。残念ながら治療は難しいとされています。

「混合性難聴」

伝音難聴と感音難聴を併発したものをいいます。難聴がこれらのどの種類なのか把握し、それに適した対策を講じることが必要です。

加齢による難聴の特徴として、高齢者は「自分が難聴だ」という事実を受け入れにくい傾向があります。そのために対策が遅れがちになります。また、高齢者は「自分は普通に聞こえている」、「相手がきちんと話してくれれば十分聞こえる」と楽観的に考えてしまいます。したがって自分よりも家族や友人が先に難聴に気づくことも多いのです。さらに認知症の傾向がある場合など、会話への反応が乏しいときは、その原因が認知機能によるものなのか、難聴によるものなのか、判断が難しい場合があります。こうした高齢者特有の特徴をよく観察する必要があります。

補聴器の相談を受けてみましょう

自分が難聴かもしれないと思ったら、まず耳鼻咽喉科医の診察を受けましょう。耳鼻咽喉科では耳の診察や聴力検査をしてくれますから、それをもとに何らかの治療をするか、補聴器が必要か等の判断をしてくれます。難聴の種類は何か、原因は何か、程度はどのくらいか、治療法はあるかなどを参考に、今後の方針が定まります。

補聴器を装用することが必要な場合は、専門の医師または補聴器専門店に相談します。医師は日本耳鼻咽喉科学会が委嘱する「補聴器相談医」に相談するとよいでしょう。また補聴器専門店に相談する際も信頼できるお店を選びましょう。補聴器は管理医療機器に分類されていますので販売には一定の手続きが必要です。確かな知識と経験のある有資格者が相談に乗ってくれるお店を選ぶようにしましょう。

補聴器装用までの流れ

(1)販売店を訪れる前に

・耳鼻咽喉科を受診(できれば補聴器相談医を)
・難聴の診断
・補聴器装用の相談

(2)補聴器専門店へ

・有資格者に相談をする
・フィッティングプランを立てる

(3)聞こえの測定

・医師からの情報を提出
・必要に応じてデータを収集

(4)補聴器の選定

・目的や環境に合わせて補聴器を選択
・試聴してから器種を決定

(5)効果の確認

・実際に補聴器を使用して聞こえを確認
・最適の設定に調整

(6)着用指導

・装着や操作が一人でできるように指導を受ける
・使用上の注意やアフターケアについて説明を受ける

(7)再調整・アフターケア

・日常生活で使用して不便な点があれば調整
・聞こえの変化等があれば再調整

高齢者になると、耳鼻科医や補聴器専門店に出向くのがおっくうになる傾向があります。しかし、補聴器を快適に使用するためには、定期的な調整、メンテナンスが重要です。特に新しく装用した当初は微調整が欠かせません。なるべく面倒がらずに出掛けるよう心掛けましょう。

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