補聴器を通販で購入するということ
ネット通販やカタログ通販が普及した今、あらゆる商品が通信販売で買えるようになりました。補聴器も例外ではありません。「専門店で買うよりも価格が安い」とか「店員の声掛けを気にすることなく気軽に選べる」などの理由で補聴器通販を利用する人もいるようです。たしかに通販には安さと気軽さというメリットがありますが、補聴器を通販で購入することで深刻なデメリットに直面してしまうケースもあります。
それって本当に「補聴器」ですか?
まず注意したいのは、補聴器と間違えてしまいそうな「集音器」がまぎらわしく売られていることです。「通販で補聴器を買った」というお客様が来店されますが、よく見てみるとそれが単なる集音器だったということもままあります。
補聴器の設定と調整がほとんどできない
通販では送られてきた補聴器と説明書を見ながら、すべて自分で設定しなくてはなりません。使いはじめてからの調整も自分ですることになります。補聴器は身体の一部ともいわれる大切な耳の補装具ですので、複雑で繊細な調整が必要です。専門家のカウンセリングやサポートがなければなかなか適切な使用はできません。自分の聞こえの状態すら客観的に評価されていない状態では不安が残ります。
間違った使用法もスルーされてしまう
間違った使い方をしても通販サイトは教えてくれません。どこかに小さな文字で書いてあるのかもしれませんが、素人に理解できるように分かりやすく説明されていないことも多いようです。ショップであればスタッフが指摘してくれるような初歩的な間違いも、通販ではそのままということもあり得ます。
補聴器を通販で買う際の落とし穴
ネット通販やカタログ通販では業者によって意外な落とし穴があります。この数年、増えているクレームは「返品」に関するトラブルによるものです。たとえば「通販で補聴器を買ったが聞こえが悪いので返品しようとしたら、返品はできないと言われた」、「自分でうまく設定できないので返品を申し出たが断られた」、「無料お試し期間をすすめられて使ってみたが、あとで商品代金を請求された」、などのクレームがあるようです。
難聴を悪化させる危険も!?
補聴器は薬事法で医療機器に分類されています。当然、精密で繊細な機械です。メーカーは専門家による設定や調整が行われるという前提で出荷しています。しかし、通販では素人が未熟な知識で設定や調整を行わざるを得ません。正しい調整とはかけ離れた状態で補聴器を使用するケースも出てきます。もしも、正しく調整されていない補聴器を使い続けるとどうなるでしょう。目的である聞こえを改善するどころか、難聴を悪化させてしまう可能性もあるのです。
通販ではなく専門店で購入する場合の安心感
一般的に補聴器専門店では補聴器の購入にあたって以下のようなプロセスを踏みます。このプロセスのひとつひとつが補聴器を適切に使用するための大事な要素となっています。
- カウンセリング
人によって聞こえの状態や耳の形状は違います。通販と違って、専門店では詳しくお話を伺って、お客様のご相談に応じます。 - 聴力測定
最新鋭の機器できめ細やかに聴力測定を行います。このデータが補聴器選びや設定の基本になります。 - 補聴器の設定
聴力測定やお客様の印象をもとに、補聴器の設定と調整を行います。 - 効果測定
補聴器の使用で聞き取りの力がどのくらい改善したか調べます。 - 補聴器のお試し
補聴器を装着して実際に自宅や職場で使ってみます。 - 補聴器の調整
実際に試聴してから、さらに音量や音質を微調整します。 - お買い上げ
補聴器で音や会話が聴きやすくなったのを確認した上、でお買い上げいただきます。 - アフターサービス
補聴器の掃除や微調整、ご相談への対応などのアフターケアも万全です。
補聴器専門店ではおおむね以上のようなプロセスが用意されています。通販ではこのようなきめこまやかな対応はできません。いつも身につける補聴器だからこそ、安さや手軽さに魅かれて安易に通販で購入するのは避けたいものです。
結論!補聴器は通販ではなく専門店で買おう
何ごとにもメリットとデメリットがあります。しかし補聴器に関しては、これまでみてきたようにメリットよりもデメリットのほうが深刻で、デメリットどころか危険とさえいえる問題をはらんでいます。補聴器を通販で買って正しく使えずにいるうちに難聴が悪化してしまう――最悪の場合はそんな事態も起きかねないとなると、やはり補聴器を通販で購入するのは避けたほうがよいのではないでしょうか。激安とか超特価とかの宣伝文句に惑わされず、ご自身の聞こえに合った対応をしてくれる補聴器専門店を選びましょう。