難聴が進行しても、「まだ大丈夫」、「まだ補聴器を付けるほどではない」「歳のせいだから仕方ない」と、なかなか耳鼻咽喉科の受診をしない方や補聴器を装用しない方は残念ながら少なくないようです。
難聴を放っておくと起こる問題は、聞こえが悪くなることだけではありません。難聴を放置することで生じる様々なデメリットを知っておきましょう。
難聴になった時の問題点
①コミュニケーションの量が減り、徐々に孤立してしまう
聞こえが悪くなると、会話中に何度も聞き返してしまったり、喋りかけられたことに気づけなかったり、という状況がどうしても増えてしまいます。そうなると、周りの人はどう感じるでしょうか。
もちろん全員ではありませんが、何度も同じことを話すのが面倒になって会話が億劫になる人や、気づかないのは失礼だと怒り出す人もいるでしょう。聞こえづらくなっている人が、会話の流れを止めて聞き返すことに罪悪感を感じてしまうケースもあります。
このような生活を続けていくと、周囲の人も自分自身も、お互いに積極的にコミュニケーションを取ろうという気持ちが段々減っていき、聞こえに問題を抱えた人が、徐々に孤立してしまう……という事態が起こります。
加齢による難聴は誰にでも起こりうることです。周囲とのコミュニケーションは社会生活上で非常に重要ですから、最近会話中に聞き返す頻度が増えたな?と思った場合は、一度耳鼻咽喉科を受診してみることをおすすめします。
②家族との会話も減少しがちになる
難聴を放っておいた場合のもうひとつのデメリットは、家族との会話が減少することです。ご飯やお風呂に関するような、生活にどうしても必要な内容であれば、耳が遠くなっても声を掛けてくれるでしょう。しかし、どうでもいい冗談やちょっとした雑談などは、何度も聞き返されてまで喋ることではないので、家族間でも会話の機会が減っていく、という事態が起こり得ます。
家族であっても、相手に聞こえるように常に大声で話しかけ続けるのはかなり大変なことです。そういった苦労を家族に続けさせたくはありませんよね。日常のささやかな会話の場面を家族間で楽しむためにも、ここのところ聞こえづらくなったな、難聴になったかな?と思ったら補聴器の装用を視野にいれてみてはいかがでしょうか。
補聴器の早期装用をおすすめする理由
難聴になってしまったら、なるべく早めに補聴器の装用を検討しましょう。なぜなら、症状が軽い時から装用した方が、より聞き取りの改善が見込めるからです。
補聴器を付けることで、聴力の悪化が進行するのでは……と心配される方がいらっしゃいますが、自分の聴力に合った補聴器を着けている限り、聞こえが悪化することはまずありません。音を聞く脳の回路は、使わないでいるとどんどん働きが悪くなっていくため、数値的には同等の聴力であっても、難聴の症状が比較的軽い早期の段階から装用した人の方が、より良い聞き取りが出来る傾向があります。
難聴がかなり進んだ状態になると、聞き取りに対する脳の機能が鈍くなってしまっているため、補聴器を装用しても、その段階では期待したような良い聞き取りが出来ない、という可能性があるのです。
補聴器は無料レンタル期間を設けている専門店も多く、自宅など普段の環境で聞こえの改善を体感することができます。また、設備の整った専門店なら、聴力測定を行い、自分の耳に合った調整が可能です。ヒヤリングストアでも様々な補聴器の無料レンタルを行っておりますので、まずはご相談だけでもお気軽にお越しください。
認知症・うつと難聴の関係
近年、様々な国や研究機関から、「認知症・うつ病と難聴との間に因果関係がある」という研究結果が報告されています。
上記の表からも分かる通り、聴覚障害の男性は、そうでない男性に比べて3倍以上うつ病になりやすくなっています。これは、外からの刺激が少ない状態が長く続くことによって精神活動が抑制されてしまうことが原因だと言われています。また、認知症も、脳への刺激がなくなることが発症の原因のひとつとされているため、うつ病と同様、難聴となった場合は、発症の危険性が高まると考えられています。
聴力が低下してしまった時はそのまま放置せず、補聴器を装用し、また積極的に会話などに参加して、脳に一定以上の刺激を与え続けるようにすることが非常に大切と言えるでしょう。