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2019.8.23

補聴器は認知症に有効か?難聴と認知症、補聴器の関連について

難聴と認知症の関連について、テレビやインターネットで取り上げられているのをご存知の方も多いと思います。難聴を放っておくと認知症になってしまうのでしょうか?補聴器は果たして認知症予防に有効なのでしょうか?

今回は「難聴と認知症、補聴器」についてお話しします。

難聴と認知症の関連が言われるようになったのはなぜか?

2015年に厚生労働省が発表した「認知症施策推進総合戦略 (新オレンジプラン)」。

2025年には認知症の人は約700万人前後になり、 65歳以上高齢者に対する割合は、現状の約7人に1人から約5人に1人に上昇するという見込みとなりました。
これを受けて今後は、認知症の人が単に支援される側という考えではなく、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会、つまり自立を目指して社会の仕組みも整えていこうという方針が打ち出されました。
なかでも具体的な施策の一つとして「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」のうち、「発症予防の推進」が掲げられています。認知症の発症予防として、運動、口腔に係る機能の向上、栄養改善、社会交流、 趣味活動など日常生活における取組が重要とされています。
また、認知症の危険因子(病気の発生や進行の原因となる要素)として加齢、遺伝性のもの、高血圧、糖尿病、喫煙、頭部外傷、難聴 等が挙げられていることから、難聴と認知症の関連が言われるようになってきました。
そして2017年、イギリスの医学雑誌「ランセット」の認知症予防・介入・ケアに関する国際委員会によれば、予防可能な認知症リスクは約35%で、そのうち中年期の難聴が9%を占めるということで、難聴を放置する影響が大きいことが示唆されました。

難聴を放置するとどんなリスクがあるのか?

2011年のアメリカ・ジョンズホプキンズ大学の発表では、軽度難聴者の認知症発症リスクが通常の2倍、中等度難聴者は3倍に上がると報告されています。
それだけではなく、難聴によるコミュニケーション機会の喪失はうつ・社会的孤立を招き、認知症のリスクも高めてしまいます。何よりも、難聴から聴覚の刺激が減少し、神経活動が低下して脳の構造変化や変性をもたらします。
また、聴くことに脳の認知資源が多く使われ、多感覚を使った複雑な作業や動作においても、聴覚以外の認知機能の処理能力が低下するという悪循環が見られます。

難聴を予防するには?補聴器にできることは?

一般的に難聴予防で大事なのは、動脈硬化と騒音曝露を避けることと言われています。健康的な暮らしを心がけ、大きな騒音を聞き続けない、耳を休ませることも必要です。
ただし、今の医療の現状として、聴覚の神経に関わる難聴(感音難聴)になってしまった場合、急性のものを除いては明確な治療法がありません。そこで、補聴器を装用して低下した機能を補うことが重要になってきます。難聴と診断されたら、補聴器によって早期に聴覚刺激を補い、関連する脳の変性を防ぐという考え方です。
補聴器を装用することによって、難聴によって脳が変性した状態を元に戻し、会話の聞き取りに改善が見られたというコロラド大学の報告もあります。

補聴器の現場でよくあること

普段、補聴器の販売で接客させていただいていると、認知症かな?と思われる方も来店されます。今回は一つの例をお話しします。

それは、少し虚ろな印象のある親御さんを連れてきたご家族でした。

「話しかけても生返事で、どうやら伝わってないようだし、ついに認知症になってしまったかと・・・」

病院では耳のチェックもしてもらい、耳垢は取り除いてもらったとのこと。

どうにか伝わるように、耳元でゆっくりお話して筆談を交えながらお話すると、きちんと応答が得られます。その後、聞こえの測定結果を元に、補聴器を試聴してみると・・・

普通の声の大きさで、十分日常会話が成り立っています。ご本人も聞こえるようになって、目の色がパッと明るくなり、ご家族も「耳が聞こえにくかっただけなんですね。良かった・・・」とホッと一安心の様子。

これは認知症と思われていた方が、単なる難聴だったというケースです。
耳が聞こえない状態でいると、外からは認知症かな?と間違われることもあり得ます。

認知症でも補聴器を使いこなせるのか?

さて、さまざまな経緯で認知症になってしまい、難聴も伴うという方も少なくはありません。もちろん、認知症でも補聴器を使いこなせる方とそうでない方がいます。

使いこなせる方の傾向としては、自分が難聴であり物忘れも多いという自覚がある、難聴で困っているので補聴器を使いたいという意欲が残っている、なかなか補聴器のことが覚えられなくても周囲の協力がしっかり得られている、認知症になる前から補聴器を使用しており使い方を習得している、などが挙げられます。

一方、使いこなせない方の傾向としては、自分が難聴であるという自覚に乏しい、認知症により新しいことが覚えられず意欲が低下してしまっている、周囲の協力が得られにくい、などが挙げられます。

認知症になっても補聴器を使える状況であるためには、どんな状況においてもコミュニケーションの重要性を念頭に置きながら、ご本人の意欲を保ち、周囲が協力していくことが重要です。

(参考資料)

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