補聴器は1台につき数万円〜数十万円、と価格が幅広く、両耳分を購入するとなると新車の軽自動車が買えるぐらいの値段になります。決して安いと言えない補聴器ですが、高い金額にはそれなりの理由があります。
また、支払った金額相応のサービスを受けるためには、それなりのサービスが提供できる店を選ぶ必要性があります。今回は、補聴器が「高い」と言われる価格の理由と、相応のサービスが可能な店選びの重要性について解説します。
補聴器の価格に含まれているもの
まずは補聴器の価格の内訳について見ておきましょう。
製品代(原価)
販売店がメーカーから補聴器を仕入れる時の代金です。この中には製品開発費、広告費、製造費、のちの保証期間内無料修理のための積立などが含まれています。
販売店におけるサービス費用
人件費、店舗の維持費、設備投資費が中心です。
その中に以下の大きな3つのコストが含まれます。
- 販売に至るまでのカウンセリング
- 補聴器を選定する際の各種測定
- 購入後のアフターフォロー(再調整、カウンセリング、各種測定など)
つまり、補聴器を使用しているお客様に対する、初回のカウンセリングと数年分の基本的なサービスを維持するための費用が含まれます。
この製品代とサービス費用が補聴器の価格を構成する2大要素です。
定期的なメンテナンスや再調整を無料で行なっていますと、よくお客様からは「今回の費用はいくらですか?」など聞かれることがありますが、最初に補聴器代金として一緒にお支払いしていただいているため、追加でいただく必要はありません。
補聴器の価格には含まれないが、都度かかるもの
別途、料金がかかるものがあります。主なものとして、電池や部品代などがあります。
補聴器は電化製品でもあるため、電池で稼働します。
空気電池を使用するものと、充電式のものがあります。空気電池であればパック単位で追加購入が必要です。充電式のものは器種にもよりますが、充電効率が悪くなってきた場合、充電池の交換が必要です。それから、自宅でメンテナンスをするためのキット費用、耳あか防止フィルターなどの部品代もあります。
また、保証期間を過ぎた後に補聴器が故障した場合、修理代は実費になります。
補聴器の耐用年数は?
補聴器の耐用年数は一般的に5年と言われています。
これは、重度・高度の聴覚障害により身体障害者手帳を取得した方が入手できる、福祉用補聴器の更新が約「5年」というところからそのように解釈されています。もちろん、日常の取り扱いや器械の状態により、製品寿命は変化します。
補聴器の購入代金を日割り計算で考えてみる
仮に20万円の補聴器を購入した場合、耐用年数を5年と考えると1年間で4万円のコストとなります。それを365で割って日割り計算すると、
『1日あたり約110円』という値段になります。
この金額で一日よく聞こえる状態を保てると思えば、決して高額ではないのではないでしょうか。
価格面での優遇措置
自費で補聴器を買われる方に対しては以下のような価格面での優遇措置があります。
補聴器は非課税
補聴器本体は非課税です。これは案外知られておらず、店頭でお客様に説明すると驚かれる方もいらっしゃいます。ただし、非課税なのは本体のみ。部品や電池は課税対象です。
正しい手続きを踏めば「医療費控除」の対象に
補聴器は医師により「治療に必要である」と判断されれば、医療費控除の対象になります。詳しくは「補聴器と医療費控除(2019年 最新版)」をお読みください。
購入代金相応のサービスを受けるために
さて、冒頭では「支払った金額相応のサービスを受けるためには、それなりのサービスが提供できる店を選ぶ必要性がある」とお伝えしましたが、それには理由があります。
実は、補聴器を販売しているからといって、すべての補聴器取扱店が当たり前のサービスを提供できるだけの人的資源と設備を備えているわけではありません。いわゆる「売らんかな」で、補聴器を購入してもらうまでは一生懸命説明はするものの、購入後は装用指導や測定、再調整、メンテナンスをろくにしない、という店舗も、悲しいですが一部存在します。
そのため、高額な補聴器を買ったにもかかわらず、その良さが全く活かされないまま「タンスの肥やし」になってしまう補聴器が後を絶ちません。補聴器業界では、関連の団体や医学会も含めて、資格や認定制度を設けて補聴器に対する満足度を上げようと努力している最中ですが、まだ全ての人に満足いただけるような環境にないのが現状です。
補聴器を購入した金額相応に満足するためには、はじめの店選びがとても重要になってくる理由について、おわかりいただけたでしょうか?
補聴器購入前に販売店に確認したいこと
補聴器を購入する際は、以下の項目を満たしているかどうか店頭で確認しましょう。
A)認定補聴器専門店に加盟しているか?
B)認定補聴器技能者が常駐しているか?
C)聴力測定や補聴器の効果測定が、防音室もしくは静かな環境で行えるか?
D)購入後の再調整やメンテナンスを嫌がらずに行なってくれるか?
AやBについては店頭の看板やインターネットで確認ができます。
Cについては、店内がうるさくないかどうか、防音室(小型もしくは中型の部屋)が店内にあるかどうか見てみましょう。Dについては、購入前のカウンセリングで「購入後にはどのようなサポートが受けられるか」をそれとなく聞いてみるといいと思います。
今回は、補聴器の値段がなぜ高いのか、その理由と店選びの重要性についてお伝えしました。ヒヤリングストアでは補聴器を購入いただいたお客様にご満足いただけるよう、スタッフの教育と設備投資を継続的に行なっています。補聴器購入を検討される際は、是非一度ご相談にいらしてください。